月詠み 日々 細胞分裂

- 泡沫の妄想を あなたへ -

無職の俺に降って湧いた話 第二話

きょうは きのうのつづきです。

 ↑ あらすじ

『無職の日々が淡々と過ぎて行く。ある日、友人に「(株)君がいて、ぼくがいる」という怪しい会社のアルバイトを紹介される。

 バイトの内容は、買い物などの代行業務だと友人から聞いた。

 無職期間の間にすっかり自信を無くしてしまい、今の自分に働くことが出来るだろうかと戸惑うが、手持ちの生活資金が減っていく危機感がまさりバイトをはじめることを決心した…』

 それでは、つづきがはじまります ↓

 ー ー ー ー

このバイトは、始業開始時間までに勤務先に行って「メガネ」を受け取るところから始まる。

その「メガネ」のフレームにはWebカメラ、レンズ部分にはモニター機能を搭載している。

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「メガネ」をかけるとモニターに依頼内容が映し出されるので、基本的にはその依頼通りに行動することさえ間違えなければ問題はない。

「依頼内容は3つ表示され、その中から好きなものを選択することが出来る」

 説明会に参加したとき、この選択できるという部分に「久しぶりに働く」という緊張感が少し和らぐのを感じた。
よく「無理のない、あなたのペースで働けます!」とかいう求人広告に掲載されている殺し文句が頭をよぎったが、きっと私はどこか心に余裕が欲しかったのだろう。
依頼内容によって拘束時間も時給単価も違ってくるが、今はとにかく時間が短いものを優先して、それから依頼内容を比べて選択することに決めた。
時給は、判断材料としては優先順位の一番最後にまわした。
お金に余裕はないのだが、無職生活を重ねるうちに精神的にも肉体的にも自信を無くしてしまっている為、これ以上つまづくと立ち上がれそうにないという予感がしたからだ。

リハビリがてら、無理のないように。
でもどうせなら楽しんでバイトをしていきたい、と弱気でありながらわがままだった。


 ー ー ー ー


「メガネ」は見た目には、本当にただのメガネだった。
でも、そのメガネに搭載されたレンズを通して、見知らぬ誰かの目になるのだと意識すると「メガネ」から異様な熱を感じるような気がした。
仕事場の専用窓口で「メガネ」を渡され、しばらく手にとって眺めていたが意を決してその「メガネ」をかけてみた。

モニター部分に文字が浮かんでいる。
依頼内容だ。
上から順に1,2,3とナンバリングされ、業務依頼が続いている。
その横には拘束時間と時給が表示されている。
更にその右に、数字があるが。何の数字だろうか。
音声認識操作を使って、依頼番号を宣言する。
「1番」と告げたその声は、ふるえ声だった。


 ー ー ー ー


初めての依頼で私が選んだものは、小学生のおつかいのような仕事内容だった。

「セブンかイレブン、どちらかのコンビニで新作のチロレチョコと一番値段の高いカップ麺を買ってきて」

他の選択項目は「〇△市でプレオープンするモールを訪ね、ブログ用の写真を撮ってくること」「〇○駅前のコンビニで超短期、一時間のバイト、おねがいしゃす!(経験者希望!)」


「依頼で買い物をする必要がある時には、依頼主の元へ買ったものを直接持っていかなくてはならないのだろうか」

依頼された通りの商品を、支給されたプリペイドカードを使ってレジで会計をするという時になってから、そんな疑問がわいてきた。
ヒヤリとしながらも、品物はレジ棚に並べてしまっている。
ところが、思わぬ方向から助け舟がやってきた。

「あらかじめ渡されている専用の袋があるでしょ?それに支給された伝票を張り付けて、あとは買った品物を入れて最寄りのコンビニで渡せばいい。つまりここでこのまま渡せばいい」

目の前のコンビニ定員から助言がきて驚いた。

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目の前のメガネをかけたスキンヘッド頭のコンビニ定員が、

「このバイト、はじめてですか?」

という言葉の後に続けて教えてくれた。
どうやら彼のメガネも私がつけているものと同じもののようだ。

「ありがとうございました。また、おこしくださいませ」

はじめてのおつかいを終えた私をあたたかな目で見送る店員。
私は逃げるようにしてコンビニを出た。
そして、出たと同時に、目の前にあるポストにゆっくりと近づきメガネを外した。
一つの要件を済ませれば、次の依頼の選択画面がモニターに映し出されるのだが、

「今日はもう疲れた。もう止めておこう。帰って横になりたい」

と思うのならば、その時点でバイトを切り上げて帰ることもできる。
これこそが、このバイトの一番おいしいところだと私は思った。
業務終了時には「メガネ」と支給されたプリペイドカード等を専用の封筒に入れて近くのポストに投函して返却する。
ここまで済ませるとあとは自由になれる
「メガネ」の映像データは、再度会社で確認され、審査で合格すればすぐに給与が振り込まれる。

私が一連の行動が「メガネ」のWebカメラを通した商品となる。
さきほどまで、私がコンビニで買い物をしていた景色は、依頼人をどんな気持ちにさせただろうか。
まぁ、とりあえず、依頼内容はクリアできた。
そう考えると先程までの緊張感が解かれて、久しぶりに満足感を得ることができた。
ふしぎなバイトといえど立派な仕事だと、誰かに大きな声で伝えたい気持ちが沸いてきた。
自宅までの帰り道、そういえば久しぶりに初対面の人と会話したなと、そう思った。




 ー ー ー ー


つづきます