月詠み 日々 細胞分裂

- 泡沫の妄想を放ちます -

『創造の神』

音楽(リズム)と実験が好きな神がいた。
その集大成として生態系を造り、主に「地球」という星の観察に重きを置いていた。
実験の最中、意見を述べる人間という生き物が鬱陶しいと感じ始め、一先ず声を取り去った。

途端に彼らにスピード感がなくなるが、すぐさま文字で抗議をし始めた。
今一番の研究は隕石への耐久実験であり、そこに時間を割いていた。
兎にも角にも、少し静かに考えさせてもらいたかったわけだ。

口やかましい人々の心を牛耳るために、神は『一つの音楽』を人々に与えることにした。
誰もが四六時中聞き入っていたくてたまらない、そんな終末的中毒性のあるリズムがこの神によってリニューアルされた。

人々は新たなリズムを体に宿すと日常を放棄し、まずは寡黙に聞き入った。
次第に目の前の社会が怠惰な雰囲気で埋め尽くされた状況に移り変わる。
大雨が降ろうが、犬がシャウトしようが、大きな建造物が崩れようが皆は聞き入るのを止めない。
本能的につがうような場面であっても、心は、リズムに占拠されている。
神は隕石を作成しながらそれを横目に呟いた。

「そりゃぁどんなシーンにも似合うリズムだよ。心の底から響いてくる心地よさだろう。しばらく静かにしておいておくれ」

そんな中、ある一人の青年がうずくまり、耳を塞いで叫び声をあげた。
嫌悪が顔に表れている。
分析結果によると、どうやら飽きたようだ。

神は激怒した。
徹夜続きの隕石作成の疲労感も手伝い、思わず耐久実験前に地球を破壊するところであった。
自らの心臓の音こそ最高のリズムのはず。
それを改良し、再度その賜りものの恩恵を敬わらせることに成功したと、 生命のリズムを蔑ろにしようとしている人間を従順させられたと思っていた。
そんな矢先の出来事であったわけだ。

神は失望する元凶となった青年のリズムを一先ず止めた。
すると、崩れ落ちた若者の傍に同じくらいの年齢の娘が寄り添い、横たわった青年の背中に耳を当てた。
やがて娘は肩で悲しみのリズムを刻み始めた。

神は驚いた。

「そういえばこのリズムもなかなかではないか。随分久しぶりだ」

声を奪い去ってからというもの随分と人間の観察を疎かにしていた。

「作業用のBGMにぴったりだ」

気付けば人間という作品に、恍惚の笑みを浮かべていた。
それからというもの、人間の自発的な行為に再び興味を覚えた神は、再び声を与え、心臓の音を陰に潜ませた。

神は今日も完成間近な隕石を片手に、新たな人類の作り上げるリズムの誕生に耳を澄まし、至福の時を過ごしている。


 

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妄想話でした。