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月詠み 日々 細胞分裂

- 泡沫の妄想を放ちます -

私の同僚が持っているらしい「ストレス社会で生きる方程式」

私の仕事場にひとり浮いている人物がいる。
その人は私と同期入社だ。
彼は、自分の思い通りに事が進まないとたいへん機嫌が悪くなる。
取引先の相手に対してはとっても外面がいいのだが、社内では内弁慶で誰も彼に逆らえない。
彼が社内での立ち位置が確保されるのは、何より彼の営業成績がダントツで抜きんでているからである。
人もモノも食べ物も…とにかく好き嫌いが多く、目の前に何かあれば好きか嫌いかで仕分けしたがる。
容姿は一般的な感覚で捉えればおおいに不可である。
会話は盛り上がりに欠け、傍にいるだけで重苦しくて疲れを感じさせる人だ。

でも、誰よりもきっと、本人が疲れている…と私は思っている。
対人関係が極端に苦手で、他人との接触を究極に避けたいという気持ちが彼をそうさせているだけなのだ…と私は思っている。
…でないと、彼の隣の席で仕事をするなんてことは続かないのだ。
あぁ、また営業から戻って来やがった。


 ー ー ー ー

 

先日、仕事以外での人付き合いを極端に嫌う彼をしぶしぶ飲み会に誘った。
会社で部署ごとに順番で担当する飲み会があって、4か月に1回くらいの頻度で開くのだ。今回は私の部署で、幹事も私となった。参加は強制ではない。

「社内メンバーとの飲み会はとうぜん仕事じゃないですよね?」

誘う側はとりあえずで誘っているのだが、それに対して全力で彼は嫌がる。
だから一度誘わなかったことがあったらしいのだが、それを彼が知るや否や、職場は壊滅的な雰囲気に覆われ大惨事となった。
意図的とも思われる業績悪化。
彼がこの会社にいる限り、残念ながら誰も彼を止められないのだ。

「まぁ。とりあえず参加するというという方向で…」

と返事をするのが彼だ。
で、当日まではわからない。
これまでの出席率は3割。
なんだか顔を出す頻度すら彼は計算しているように思えてならない。

「私は自分で決めた方程式を持っていて、それに則って行動しているだけだ」

彼はよく口癖としてそんなことを一方的に話す。

きっと、それは仕事にもプライベートにも応用が利くのだと思う。
目の前に迫る問題から目を逸らさずに、力みなく滑らかに受け流すかのような日頃の余裕が正直、うらやましい。
そう、私は彼がうらやましい。
でもその方程式はどんなにお金を積まれても人に教えたくないような確立したものなのだと思う。

…でなければ、これほど多くの人に嫌われながらも自分を保ち続けられる人がいるだろうか。
アンタはアンドロイドかロボットか何かなのか。いてたまるか。そんな人間。
あぁ、今も私の隣で彼のアポ電のラッシュが凄まじい。
自分の営業成績表を見上げると、グラフは彼の隣で地面を這っている。
きりきりと胃が痛む。


 ー ー ー ー


そろそろ、 会社の中で微々たる気遣いなるものをやめようと思う。
私が皆から嫌われていることは重々承知だ。
次の飲み会でテストそしてみようと思う。
会社の飲み会の場となる、予約が入りそうな店すべてを私のネットワークを駆使し「予約でいっぱいで。大変申し訳ないですが…」にしてみせる。

対人関係に極端にストレスを感じる人が集う会員制のコミュニティ。
そこには自分たちの身を守るために持ちつ持たれつつ、私のように一人を極端に好む同志が集っている。
私らは、協力して望まない誘いを回避しているというわけだ。
世の中にはお金を払ってでも回避したい人間関係が山のように存在している。
別に、私はその山を崩そうとは思わない。
ただ、その各々の山の頂点に君臨するだけでいい。

私の方程式は揺るがない。

「自分に嘘をつかない」

その結果が今の私だ。
嘘ではない。
 

 

 

ー ー ー ー ー ー


…という、妄想話でした。