月詠み 日々 細胞分裂

- 泡沫の妄想を放ちます -

白い空間『繰り返し行う』

真っ白な世界にドアが現れた。
つまり現実の私は寝ている。
でもこれは、夢ではない。
別に存在する、不思議な世界だ。

 

 

ー ー ー ー ー ー

 

ドアの先にあったのは白い空間で、私は作業していた。
それは突然はじまったというのに、私には何をしなければならないのかが分かっていた。
そこはひたすら繰り返し行うことが意味を持つ世界だった。

「いいペースだ。乱すなよ。絶対に…」

私の背後から忍び寄り、耳元で話しかける者を振り返る余裕はなかった。
レーザーポインターを手にもって、私の正面から迫るモノを待つ。
「黒色」のモノが迫ってきたらそれに光を当てなければならない。
光をあてられたモノは、私の立っている1メートルほど先にある分岐点で左方向へとはねられる。
「黒色」のモノだけ、光を当てて分別しなければならない。
それ以外のモノは、黒色のモノが流れる向きとは逆の右側に分けられていく。
「ナイトグレー」だったり、ところどころ黒が交じったモノなど、ややこしかったり引っ掛け問題の要素は一切ない。
黒いものはどうみても真っ黒で、迷いようがなくシンプルだ。

それでも、何度も何度も、黒いものだけに反応することを繰り返していると、自分の中に変化が起きてくる。
これは本当に「黒色」という色だっただろうか。
もしも、「黒色」以外のモノに光を当ててしまった場合、私はどうなるのだろう。
興味本位で試してみたい気もするが、私に向かってやってくる物体はなかなかの速度で、モノにもよるだろうが当たれば怪我をしてしまうことが予想される。
何より、この環境で私は弱い立場という認識があって、時々背後を歩く者がささやいてくる言葉に妙な恐怖を感じている。
足首には足枷がはめられていて、逃げ出したくても逃げられない。
ここから離れるには、現実世界で私が目覚めるしかない。
もう、かれこれ半日は繰り返している気がするが、なかなか今日は目が覚めないようだ。

焦りを感じる。

「どうした?疲れたのか?まだまだ続けろ。失敗するまで続けろ」

失敗したらどうなるのかと聞き返せない。
返事もせず、断続的に迫る黒いモノに光を当てる。
ふと、視界の脇に違和感を感じる。
いつの間にか両隣にも私と同じように作業をする人がいることに気づく。
仕分けをしながら、目だけ動かして様子を探る。
確かにはじめは居なかったはずだ。

突然、罵声が聞こえる。
何を言っているのかわからないが、隣の作業員が注意されているらしい。
なんとなく、声がこちらを向いたりするのを感じて、私と隣の者とが比較されているような気がした。

そしてその直後、とても巨大な球体が正面から向かってきた。
私のレーンではない。
隣だ。
フロアの天井ぎりぎりの大きさほどあり、ゴリゴリと重厚な音を立ててゆっくりと回転している。

私は距離感を誤って、隣のモノなのにそれに向かってレーザーポインターの光を当ててしまった。
背後から劈くような罵声が聞こえる。
私は焦って、なんどもなんども黒く巨大な物体を光で刺すが動きは止まらず、ゆっくりと隣のレーンを転がり続ける。
隣の作業員と目が合った。
そのまま物体は止まることなく、分岐点を通過した。
つんざくような悲鳴が聞こえた。
隣のレーンが止まった。

 

急にぼんやりと、焦点が合わなくなった。
次の瞬間には、自室の天井が目に入った。
私はベッドで横になっている。
しかし、その現実世界にはない景色もまだ残っている。
周囲からその私に向かって、見えない足音が集まってくるのがわかった。

「起きてるから!こっちでもう起きてるから!」

思わず震え声で叫んでしまった。
突如、足音は小さくなり、何も聞こえなくなった。

 


 

 ー ー ー ー


…という、妄想話でした。

今日という一日が、誰かの誕生日だったり、誰かが亡くなった日だったり、
最悪な一日だったり最高の一日だったり…

明日も嫁の禁煙が成功しますよーに…

おやすみなさい