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月詠み 日々 細胞分裂

- ネットの深海から 泡沫の言葉を放ちます -

「風呂場で発生した泡という泡のすべてがおっさんの頭になる」という妄想

風呂場で湯に浸かっていた。

体が温まってきたところで、少し体を起こしてマッサージをする。

再び深く沈み込む。

水面に向かって泡が「ぷくぷく」とのぼっていくのが見えた。

わたしの体にまとわりついていた泡のカプセルが立ち上っていく。

 

水の中から抜け出した泡は小さく「ぷちぷち」と音を立てて弾けた。

その弾ける前のドーム状になっている瞬間にだけ、集中して焦点をあててみる。

 

小さな、丸刈り頭のおっさんの頭が見える。行け! 稲中卓球部(3) (講談社漫画文庫)

水面から、おっさんの鼻から上だけが覗いている。

わたしは冷静だ。

そこまで疲れているわけではない。

冷静なあたまで、鼻から上のおっさんと何度も何度も視線を合わせる。

視線が合った瞬間におっさんははじけ飛ぶ。

そのまま、見つめ合っては消えるをわたしは眺め続けた。

 

そろそろ風呂から上がろうかと思って体を一度湯船から出したが、振り返った先に沢山のおっさんの頭が「ぷちぷち」と消えるのをみて、最後に洗面器を沈めて大きなおっさんの頭を作ってみたいという衝動にかられた。

 

沈められた洗面器が「ぼわんっ」という音を立ててひるがえる。

「等身大」という表現は実物を見たものにしかわからない気がするが、わたしが思う等身大のおっさんの頭が一瞬現れて、私と対峙した。

「マンツーマン」という言葉が頭に過った。

 

おっさんは洗面器の中でも存在するのかと疑問に思った。

沈められた洗面器の中で浮上するのを窮屈そうにじっと待っている様子を想像するとさすがに気持ち悪く感じたので、そのまま水面に蓋をするように洗面器を逆さまのままにぷかぷか浮かばせて、そっと栓を抜いておいた。