月詠み 日々 細胞分裂

- 泡沫の妄想を あなたへ -

『Village revitalization』 vol.3 「村おこしビルダーズ」

 

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都会から、逃げるように田舎に戻った時、すでにわたしを忘れていた。

今は、おじいちゃんのことを老人と呼んでいる。

何と呼べばいいかとわたしから聞いたことがある。

すると「老人じゃ」と言ったので、その通りに老人と呼んでいる。

 

今でも時々「ボクは…なんだったか?」とわたしに聞いてくる。

わたしは「 老人 じゃないの?」と返事を返すと、

「そうだった。ボクは老人という名前だったな」

と笑顔でわたしの顔を見る。

 

知らない間に、わたしのおじいちゃんは消え、目の前の老人の中に過去のわたしはいなくなった。

でも、孫のわたしのことがわからなくなったこと以外、今のところ老人に「おかしい」ところはない。

いや、それがあってからもその前も、私に対して接する態度が全く変わらないという部分は「おかしい」んじゃないかと思う。

 …でもまぁ、素敵だとも思っている。

 

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 これまでのあらすじ

 

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  わたしは今、目の前の地面を掘っている。

 依頼された内容の通りに現地に着くと、一本のシャベルが用意されていた。

 「メガネ」に表示される〇の位置をひたすら掘る。

 矢印が↑と表示されれば↑の方向に向かって歩く。

 また〇が表示されたらそこを掘る。

 「なんでわたしはこんなことをしているんだろう」

 とはもう思わない。

 これが依頼を遂行するという「わたしの仕事」だからだ。

 「メガネ」から支持される通りに動く。

 その結果が、クリア出来ても出来なくてもにわたしに責任はない。

 わたしはキャラであってプレイヤーではないのだ。

 

「民間企業参入型開発特区」に指定されたこのど田舎に、「(株)きみがいて、ぼくがいる」が手を加えるようになってから3カ月が経とうとしていた。

 この会社はもともと、消費者の望みを金銭に変えて、その望みを「依頼遂行人」が達成するまでの一部始終を動画で楽しめるということが売りだった。その大元の動画サイトを知らない人は、このど田舎の住人以外にはいなかったんじゃないだろうか。

 特殊な「メガネ」で遂行人は動画配信し、依頼主はボイスチャットやコメント入力を通してコミュニケーションを楽しんでいる。追加依頼をしたりオプション設定をする度にお金がかかる仕様だ。

 

 会社は、そのスタイルをそのままこの小さな村に持ち込んできた。

 人口が80人ほどの村が、三ヶ月で300人を超すまでに増えた。

 「遂行人」に志願する人達が村に集ってきたからだ。

 いままで空き家だらけだったこの村は、夜になれば闇の中に消えていた。その家々が今では闇夜を照らす。

 わたしはこの村の住人だった為か、「依頼遂行人」の仕事はオープニングスタッフの募集で簡単に就くことが出来た。

 それも今では多くの人が遂行人の枠が空くのを待っているという話だ。

 

 依頼主たちの遊びに付きあう毎日。各々で村を自由に開発している。

 見慣れていたはずの田舎の風景が、少しずつ変わってきた。

 畑のあった場所に、今日は小さなログハウスが立った。

 ログハウスの素材はすべてこの村で採れたものだ。

 わたしもその依頼に参加していたからよくわかる。

 昔、木登りをして遊んだおおきな木。

 その木を依頼に従って切り倒してからというもの、わたしの心の中で何かが引っかかっている。

 

 日が暮れた。

「メガネ」外し、「遂行人」からログアウトする。

 新しく出来た小さなログハウスを自宅の二階から眺める。

 一階から老人の声が聞こえた気がした。

「かみさんは 全てお見通しだからな」

 

 わたしは、かみさまなんて見たこともない。

 でも、向こうからは見えるらしい。

 それが小さい頃はすごくこわかった。

 

 今、わたしからは依頼主の姿かたちがみえない。

 それが今、つくづく怖いと感じる。

 

 

 

 つづく…

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どっちでもいいヨ

どっちでもいいヨ

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  • J-Pop
  • ¥250

 

 「シャベル」「スコップ」の違いで何十分か苦しんだ。

 わたしは関西で生まれ育った。

 西日本では、シャベルが大型スコップは小型という認識が大多数らしい。

 しかし、これが東日本になると、逆になるらしい…。

 それを知ってから、なぜか私がどちらを大型のモノと認知していたかがわからなくなった…。

 あれ…小さいほうをシャベルって言ってた時も確かあった。

 どうなってんだろう…って。