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月詠み 日々 細胞分裂

- 泡沫の妄想を放ちます -

無職の俺に降って湧いた話 第九話

 

これまでのあらすじ (1話~8話)

「(株)君がいて、ぼくがいる」という怪しい企業名の会社が売上を伸ばしている。

 この会社の提供サービスの特徴は「依頼主(消費者)の頼みごとを「ミッション遂行人」とよばれるスタッフがクリアしていく姿の一部始終を鑑賞できる」こと。

 遂行人の装着した「メガネ」は、フレーム部にWebカメラ・レンズ部にモニターを搭載している。

 その「メガネ」を通じて、依頼主と遂行人がつながる。

 依頼主の依頼内容が困難なものほどサービスは高額になり、遂行人の得られる報酬も多くなる。

 遂行人は自分のファンを作ることで報酬にボーナスがつくことから、何度も指名してもらえるようにと様々なアイディアを出しては依頼主に気に入られようとする…。

 

 まぁ、とにかく依頼をクリアすることさえできれば報酬は得られる。

 私は、この『メガネ』で食っていくんだ…。

 

ミュージック

ミュージック

 

 それでは、つづきです ↓ 

 ー ー ー ー


過去に依頼された覚えのない人物から指名された。
アプリを使って、依頼者情報を調べると高校生の女の子だった。
適当に今はやりのアニメのグッズを見せてやったり、甘い食べ物でも見せれば反応があるかと思ったが、何も手ごたえが無かった。
依頼時間が短かったこともあり、手探りの状態のまま時間が過ぎた。
結果、条件をクリア出来なかった。

依頼内容は「わたしを笑顔にさせてください」というもの。
抽象的すぎる。
こういう依頼、実はクリアしにくい。
やはり、具体的にどこで何をしてくれというものが一番引き受けやすい。
それでも依頼を遂行したのは、過去に依頼された記憶がないのに、そのようにモニターに表記されたことにひっかかりを感じたことと、「遂行人指名」されたという点からだ。
私は遂行人としては正直、リピート率は高くない。
でも、地味に積み重ねた経験値で、遂行レベルはかなり上の方だと思う。
めずらしくリピーターがきたから、少額の依頼でもいいかと引き受けてみたのだが、もうやめたほうがいいなと思った。

稼ぐことにどん欲になると、「メガネ」はポストに投函したりしなくなった。
わたしは基本的にいつでも「メガネ」を手元に置いて、そして持ち歩いた。
そして、まとまったお金が欲しいときだけ会社に持って行ってスピード審査してもらって、報酬をその都度手渡ししてもらう。

稼いだお金は「メガネ」をカスタマイズする為のアプリソフトの購入や、依頼をお金で手っ取り早くクリアできそうな内容の場合はそこにつぎ込む。
「メガネ」の為につぎ込んだお金は、それ以上の金額で戻ってくるという法則を実感しているので一切の迷いが生じない。

だいたいの依頼主は良好な満足度の点数を付けてくれる。
遂行人レベルが高ければ、難解な依頼がモニターに現れる。
クリアすることは容易くはないが、その見返りとして報酬額も跳ね上がる。
依頼でどれだけのお金を手にしたいかを迷い選択するのではなく、自分の遂行人としてのレベルを上げることを常に意識して経験値を積んでいけば、自ずとお金の匂いを身にまとえるようになった。

少々、天狗になりつつあったのだと思う。
あの、私にはめずらしくも指名され、そしてクリアできなかった依頼。
屈辱的な気持ちがずっと消化されずに残っていたのだろうか。
ふとした時に思い出し、晴れない気持ちのままに幾日か過ぎた。

そんな、ある日。
なんとその高校生の依頼主が目の前にあらわれたのだった。

 




 

 ー ー ー ー


 つづきます…