月詠み 日々 細胞分裂

- 泡沫の妄想を放ちます -

無職の俺に降って湧いた話 第七話

これまでのあらすじ (1話~6話)

「(株)君がいて、ぼくがいる」という怪しい企業名の会社が売上を伸ばしている。

 この会社の提供サービスの特徴は「依頼主(消費者)の頼みごとを「ミッション遂行人」とよばれるスタッフがクリアしていく姿の一部始終を鑑賞できる」ことだ。

 遂行人の装着した「メガネ」は、フレーム部にWebカメラ・レンズ部にモニターを搭載している。

 その「メガネ」を通じて、依頼主と遂行人がつながる。

 依頼主の依頼内容が困難なものほどサービスは高額になり、遂行人の得られる報酬も多くなる。

 遂行人は自分のファンを作ることで報酬にボーナスがつくことから、何度も指名してもらえるようにと様々なアイディアを出しては依頼主に気に入られようとする。

 依頼主の中には、自分の「お気に入り」の遂行人を他人に独占されたくないが為に、指名する度に膨らむ指名料金を恐れず、借金をしてまでこのサービスを利用する中毒者もいる。

 最近、青少年にまでブームが広がりつつあり、「出会い目的」に利用されたりと社会問題になってきている…。 

 それでは、つづきです ↓

風と空のキリム

風と空のキリム

 

 ー ー ー ー


おこづかいがたまるまで、2カ月を待つことはとても長く感じた。
過去の依頼映像は会員であれば何度でも視聴することができる。
わたしは、その間、何度も何度も彼との同じ時間を繰り返し共有した。

貯まったおこづかいを机に広げ、この金額だとどれくらいの時間が予約できるだろうかと計算してみるが、30分くらいで簡単な依頼くらいしかできなさそうだった。
彼の遂行レベルと指名料を考えると、この次は3か月は待たなくてはならないかもしれない。

最近は、ネットやテレビでこの会社のサービスが社会問題として取り上げられているのをみかける。

「依頼主」が「遂行人」に犯罪に近い「依頼」を登録して、それが「クリア」されてしまったり、「遂行人」が自分の報酬額が高くなるようにと遂行レベルを急速に上げるため、過剰または異常なサービスを提供している件があると報道されている。

彼はそんな人ではない、そうならないとわたしは信じている。
彼の「メガネ」から伝わってくる世界はあたたかいものが多かった。

パソコンに向かって、依頼内容を打ち込む。
何にするかは事前にいくつか考えていた。
でも、どれも設定する度に提示される請求金額が、わたしの想像していた金額を超えてしまった。
いろいろ試していって、なんとか支払える金額の依頼を予約することができた。
わたしのことを知らせるような依頼、彼のことを知ることができそうな依頼も考えてみたけれど、やっぱりこれは違う気がして、何でもない依頼にした。
何でもない依頼。
わたしがはじめて彼に頼んだ依頼と同じもの。

予約ボタンを押すと、すぐに接続が開始された。
彼はミッションを開始する時、いつも空を見上げてからスタートする。
その癖を思い出すと、「接続中」と表示されているモニター画面をみつめているだけでも笑顔になることができた。


 ー ー ー ー

 …次回につづきます。