月詠み 日々 細胞分裂

- 泡沫の妄想を放ちます -

街の自転車屋(のオッチャン)。

 おっちゃん というよりはオッチャン。

 70~80歳くらいだと思うけど、オッチャン。

 通勤に使っていた自転車があまりにボロいので(ハンドル部分の樹脂が溶けてネバネバが一番の不快ポイント)、昨年の11月に買いかえたいと嫁に申し出た。(うちは申告制ですから…プレゼン必須ですから…
 もちろん嫁の一言「中古の自転車とかないん?」で中古自転車に決定。


 でも、いざ中古の自転車を売っている自転車屋を探すものの、なかなか見つからない。
 ネットで安い自転車を探してみたりしたけれど、何だか怖い。
 そんなこんなで二週間ほど何も進展がないまま時は過ぎた。

 ある日、嫁と近所のスーパーへ出かけていたら、
 その道を少し過ぎたところに小さな自転車屋があるのを思い出す。

 その店の隣の空き地には車輪のない自転車やハンドル、サドルの見当たらない自転車が積んであったりしていて、店の中はちゃんとした自転車があるのか少し不安になるが、試しに覗いてみようと嫁と一緒に入店する。

 店の中はピカピカの自転車が並んでいて、価格を見ると安いものは2万円くらいから。(ホームセンターでみかけるような自転車などなど)
 嫁が何も言わないので俺が口を開く。
 「これくらいより、もっと安いのないですかね…」

 するとオッチャンが口を開いた。開いたと同時にずっとしゃべりだす。
 「兄ちゃん、こんな自転車買ったらアカンで。ちょっとこっち来てみ
 店の外に連れ出される。その先には使い物にならないような自転車の山があるはず…。 
 
 よくよく見ると、値札の貼ってある自転車が三台ほどある。
 パッと見で好みの色じゃないものばかり。

 すかさずオッチャンの営業トークが始まる。
「中古の自転車だけどな、このタイヤ見てみ。ステンレスだから丈夫で良く走るんや。店の中のようなメーカーの自転車はアルミだから直ぐにダメになる。物の価値を知ってる年配の人とかは少しくらい重くても、こういういい自転車を探して買っていくんやで」

 言われて、リム(ホイールっていうのかと思ってた)をステンレスとアルミで見比べてみるとステンレスの方がピカッてて、何だか良さげに見えてくる。

 結果、9000円で中古の自転車を購入した。防犯登録代、別途用意。(防犯登録シールってパトカーから見やすい場所に貼らないといけないんですって。オッチャンに教えてもらいました
 

 

 そして時は流れ、本日、通勤用の自転車(普通の自転車)の前輪がバーストした。
 突然空気の洩れる音が聞こえたと思ったら、いっきに前輪がしぼんでしまった。
 「ガタン ガタン」とぺしゃんこなゴムをまとった「タイヤ」から体全体へ衝撃が走る。

 自転車から降りてみてみると、タイヤの一部分が縦に割れているのが分かる。

 こんな状態で走行すると自転車に悪いことは分かるが、雨が降っていて早く仕事場に着きたい。
 「ドラゴンクエスト」で言うところの毒の沼地をドガドガと歩いて回る心境で何とか仕事場まで行き着く。

 
 今日は久しぶりに定時で上がることが出来たので、仕事場を後にすると、真っ直ぐにこの自転車を買ったところに持っていく。


 実は買ってから訪ねるのは今日が二回目。
 一回目は空気を入れても、半日も経つと空気が抜けているという現象に困ったとき。
 はじめそれが起きた時に違う自転車屋にパンクかと思って持っていったら、「チューブが少しねじれていた以外は特に以上ありませんね」と言われ、パンク調べ料金500円を支払った。
 確かにその日は直った…と思ったけれど、翌日にはタイヤがぺしゃんこ。

 結局、この自転車を買ったところに持っていって調べてもらうとオッチャンがムシゴムがダメになっているのではないかと。

 ムシゴムを交換してもらって、ブレーキの具合やらなんやらを見てもらって、料金は要らないと言われて、その日は帰宅。
 日が変わっても空気が抜けていることもなく、オッチャン信頼ポイントが少し上がる。


 今日はタイヤ交換で何種類かある中から、高めの4300円のタイヤで交換。
 IRCという日本製のタイヤが超お勧めだというオッチャンの営業トークにヤラレテ…。
 ついでに金具を無くして、ぐらぐらになっていた前かごをサービスで直してもらった。
 (お盆前のお酒の失態で何度も自転車を倒しながら帰ったらしく、その時に前かごを固定する金具がどっかいった。…そう、タイヤもきっとその時に傷つけた…


 直してもらっている間に、お金を持って仕事場に行かない私は一時帰宅して嫁に申告する。
 嫁「地域限定のプレミアム商品券で支払えるなら、それで払っといて
 私「…あぁ、うん(俺、そういうの聞きたくない)」
 
 そして、支払いの時。
 ここで自宅待機の嫁 VS オッチャンが繰り広げられたのですが、オッチャンが華麗にかわして試合終了。
 私「あ、商品券で支払うことってできます?」
 オッチャン「あー、手数料がかかるからとか、そういうのせんのやぁ~」

 

 帰り際、オッチャンが言った。
 「自転車修理してるとな、ここで買ってくれた時の事とかお客さんの顔を思い出すわぁ」
 私「また、何かあったらよろしくお願いします(長生きしろよ!)」

 

 いい自転車屋は自転車一台を販売するのが目的ではなく、これからも自転車を通して長く付き合っていくという気持ちがあるかどうかだと思うよ。
実は中古自転車を絶妙な感じで修理に持ってこさせては少しずつお金をとっているんじゃないかと闇の心がそう呟くが、天使の心の俺が言う。「オッチャンなら別にええわ」

 

 

おっちゃん!ありがとう

おっちゃん!ありがとう