日々人 細胞分裂

- 泡沫の妄想を あなたへ -

ぺぇーぱぁーくえすと [ かみ no 紙芝居 ] Lv.7

転々と場所を変え 上空の敵から逃れた

その合間では 女神に力がもどるたびに

あの敵を倒すためにひつような

武器の創造を試した

しかし 躰を奪われ 万全ではない女神の力では

大そうな武器は生み出せなかった

結局 いま手元にあるモノは

散弾銃とその銃弾15発だけ

 

ー 上空からけたたましい咆哮がおりてくる ー

 

何もない 無機質な白い平野をさまようだけでは

当然 この身を隠すことは不可能だった

はじめ 敵は 執拗に追いかけ回してきたり

上空で待機したりを繰り返していたが

やがて 背後から一定の距離を保って追跡するようになった

そして もう この逃避行は終わりを迎えようとしていた

 

なぜなら 今や敵は俺の先回りをして

どの方向に動いても

その動きに合わせて間合いを徐々につめてくる

後は その時 のタイミングを見計らっているだけじゃないか

 

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女神さんよ 聞こえるか?

もう 逃げきれねぇぜ

次にアンタの力が戻った瞬間に

勝負を仕掛ける

 

 

「…わかりました

 では 間もなくですね」

 

  

深く息をすいこみ

心の準備を 覚悟を

決めようと思うや否や

やっぱり そういう隙を逃してはくれない

狙い澄ませていた敵は

一気に襲い掛かってきたのだった

 

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身をひるがえして

急降下してきた敵の攻撃を避ける

銃の中にすべての弾は詰めてある

手から零れ落ちた銃を拾い直し

慌てて2発連射して撃ったが

すべて当たらなかった

そらそうだ

敵はすでに上空に逃れ 旋回している

それを追う俺の手は がたがた震えている

 

 

「もう少し魔物と距離を詰めてから 撃った方がよさそうですね」

 

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うるせぇな!わかってるって!

ちょっと焦っただけだ!

 

 

「あぁ…たった今 わたしにモノを生み出す力がもどったようです」

 

 

よし わかった

次は外さないからよ

 

 

敵に照準を合わそうにも 簡単にはいかない

ひねりを加えながら 突風の如き塊が迫ってくる

一気に 間合いを詰められ

ぎりぎりのところで敵の攻撃をかわす

一撃でもくらえば ひとたまりもないだろう

でも 敵との距離が接近している この危機はチャンスだ

横っ跳びで攻撃をかわして

そのあとすぐに 発砲する

何発撃ったかなんて 数えていられない

ただ 敵の叫び声だけが

確かな手ごたえを知らせてくれた

 

 

おい アンタ

準備はいいか? 次 いくぞ

 

 

「ええ わかりました」

 

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みたび 上空へと逃れた敵のさらに上

そこから 俺の想像した大きな網が

女神の力と合わさり 具現化される

 

 

「うまく 創造できましたか?」

 

 

網の脇には重りがぶら下がっており

勢いよく 真っ白な平原へと落ちてくる

敵は抗いながらも 絡み合う網に翼を奪われ

真っ白な大地へ共に落ちた

 

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思っていたよりも網はちいさくて

重りもおおきくない

現状の女神の持てる力では

これが ぎりぎりのサイズだったというわけだ

大した拘束力はない

急いで 今のうちにと

敵の頭頂部と思われる場所に銃口をあてがう

 

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「どうしたのです」

 

 

いや…なんでもない

 


かわいた音 敵の断末魔

それが交錯したあと

俺の荒れた息だけが 周囲に取り残された

そろそろと その場を離れる

軽いめまいにおそわれた

 

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先ほどのことは 気のせいだろうか

引き金に指をかけている時

敵からなにかが伝わってきたような

 

 

「どうやら 私の思った通りだったようです

 あの敵は 私の躰の一部をもっていました」 

 

 

かすかに 体を伝うものがある

たしか これは雨というものだ

見上げた空から

つぎつぎと 零れ落ちてくる雫は

白い大地にへと 吸い込まれていく

 

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「まだ 万全ではありませんが

 こうして 少しづつ 元の世界へと戻していきましょう」

 

 

女神の声が すこしだけ嬉しそうだった

やがて 手にしていた銃も

敵をおおっていた網も

なにごともなかったかのようにして

ゆっくりと 消えてしまった

俺は なにも返さず

さらさらと降る雨の中を

あてもなく

また 歩み始めた

 

 

 ー ー ー ー 

Lv.8につづく…


…Lv.1にもどる?